(2008年11月25日紙面掲載)
先日放送されたNHKスペシャル「デジタルネイティブ」では、ソーシャル・ネットワーキング・サイト(SNS)を駆使して世界中から仕事のパートナーを探す、13歳のCEO(番組で紹介された彼のPR動画)が印象的であった。一方、ミクシィなど日本のSNSは公私の「私」の部分が肥大化し、中高年ビジネスマンにとって仕事に活用するのは難しいのが現状だ。
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今月、ヤフー日本法人がひっそりと新しいSNSサービスを開始した。 「CU(シーユー)」(写真左)という。ヤフー色を排したシンプルなデザイン。実名で登録し、現在の勤務先や肩書き、仕事内容、職歴や出身学校なども記入が求められる。ビジネス・ネットワーキング・サイト(BNS)ともいわれる分野だ。
モデルは世界で最も成功しているBNS「リンクトイン(LinkedIn)」(写真右)。約3000万人が登録し、名前、社名、肩書などで検索ができる。例えば現在勤務している社名に”sony”を含むという条件で検索すると、世界から2万2500人がリストアップされた。ネット上に巨大な社員名簿が存在するようなものだ。過去に勤務経験のある人も加えると4万4500人に拡大する。
プロフィールページは「公開履歴書」の性格も帯びるので転職サイトとしても機能する。1年に35%の人が職を変える米国の実情も、これらのサービスが受け入れられる下地にあるのだろう。日本人でもこなれた英語で経歴・スキルを詳細に書いておけば、世界中からヘッドハントの打診がくるとの噂もあるほどだ。
日本語未対応であるにも関わらず、日本からの登録者は約9万5000人(全登録者の約 0.3%)に上る。実際にはその多くが日本で働く外国人ビジネスマンや外資系企業の日本人と思われる。ちなみに対象を日本国内登録者にしぼり、社名”sony”で検索すると1250人がリストされた。”microsoft”は730人、”toyota”が250人、お堅いと思われる”smbc”(三井住友銀行)も75人の登録者(いずれも過去勤務経験者を含む)がいた。日本の大企業社員でも、SNSへの実名参加やネット上での肩書き公開が禁止されているわけではないようだ。
肩書意識の強い日本の中高年ビジネスマンは既存の匿名SNSに関心がないように見える。ネットコミュニティでは「誰であるかは重要ではない、何を話すかがすべて」といわれるが、商談やパートナー探しにはやはり社名や肩書きも判断材料になる。実名BNSなら名詞を判断のよりどころにする中高年にも受け入れられる可能性がある。
リアルの知人、友人関係の再現という性格が強い日本のSNSと異なりフェイスブックなど海外のSNSは、新しいビジネス人脈をつくるための支援機能が充実している。日本の中高年ビジネスマンも異業種交流会への参加などは昔から活発であるし、人脈作りへの関心も低いわけではない。SNSが使われないのは、そういう需要に応える仕組みを日本のSNSがまだ備えていないからという見方もできる。
ところで日本のBNSでは「SBI Business」が数万人の登録を集めている。ユニークなのは登録者の名前がグーグルなどで検索された時にプロフィールページを上位表示させることを重視している点だ。
今後、誰かのことを知りたければまず検索、という行動が一般化するだろう。あなたの名前が検索されたときに、あなた自身が管理する公式プロフィール情報が上位表示されるのはメリットが大きい。リンクトインも同じ機能を持っており、私の名前を検索してみたら、リンクトインのプロフィールページが5番目に登場した。BNSはあなたの名前のSEO(検索エンジン最適化)対策とも言える。
話をCUに戻そう。現在の登録者は現在約5000人、実名がずらりと並ぶ画面は壮観だ。ただ現在の参加者はネット業界に偏っており、ソニー、トヨタで検索しても該当者はゼロだった。大企業のビジネスマンが参加してこそ価値も高まる。まずは登録することから始めてはどうだろう。
萩原さん、MLなどでお世話になってます。坂本です。
BNSっていう呼び方面白いですね。でも、ビジネスSNSっていう方が浸透しやすいかもなどと思います。
LinkedInは外資ではかなり普通に使ってます。外から人が来ると、何コネクションくらいでつながるか競い合ったりとか。
筆名もいいのですけど、実名ブログで人脈や仕事探しに役立てるとかいう方向が日本でも広がるでしょうね。
投稿情報: 坂本英樹 | 2009年1 月16日 (金) 22:05